メルクマール

僕はラジコン飛行機をいじっていたことがあるのですが、大会などで使われる曲技機は、ありあまるエンジンパワーがあり、インメルマンターンだろうとナイフエッジだろうと、どんな態勢からでもパワーでこなしてしまいます。プロペラが向いている方向にとにかく進む、って感じですね。

でも、最初からそんな機体を使っていると、うまくなれません。物理的に、飛行機は空気をつかんで飛ぶもので、またエネルギー保存則（速度と高度は等価交換）に支配されています。それを感覚として身につけるには、エンジンパワーの少ない、軽い機体で練習する必要があります。

現実の飛行機も、そうなのでしょう。戦闘機搭乗員の候補生も、最初は非力な練習機を飛ばします。初等練習機、中間練習機とステップアップして、初めて戦闘機に乗ることができるのです。　戦闘機の操縦は難しいのでいきなりは飛ばせない、というのもありますが、翼で風をつかんで飛ぶ感覚を、最初に身につけるべきという意味もあるでしょう。

今回、芳佳たちは箒で特訓していましたが、あれが練習機にあたるのでしょうね。旧日本軍では、練習機はオレンジ色の塗装をされたので『赤とんぼ』と呼ばれましたが、あの箒がウイッチにとっての赤とんぼなんだなぁ、と。　ストライカーユニットのパワーや制御に頼ることなく、より原始的な機体で練習することで、より純粋に「空をとぶ技術」を磨くことができるのでしょう。

また、水を運ぶというのも、効果的な訓練になったはずです。水を入れたバケツを下げるという、不安定な状態で、揺らさないように飛ぶ必要があり、微妙なコントロールが要求されます。『イニシャルＤ』での、コップの水をこぼさないようにドリフトする特訓を思い出しました。

さらに３日目には、３人で協力して、大きなタライを運んでいました。これは編隊飛行や連携の練習になったことでしょう。恐るべしアンナさんの特訓。　それらの成果が、ネウロイとの戦闘で遺憾なく発揮されました。

坂本もかつて、アンナさんにシゴかれていて、一人枕を涙で濡らしていた、というエピソードが面白いですね。アンナさんは”フルメタルジャケット”のハートマン軍曹のように、まず生徒のプライドをへし折るところから始める教官でしょう。　プライドの高い坂本には、そうとう堪えたと思えます。

そんなわけで、典型的な”友情・努力・勝利”の回でした。アンナさんのために家を守るエピソードも良かったし、よくまとまった短編です。１期でも、こういう短編エピソードはとても良かったんですよね。

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