エリスがひとりだけで調査に来た理由は何か。あそびにいくヨ! 第2話 『あそびきにました』 の感想です。
本気で調査するのであれば、もっと慎重にやると思うんですよ。当初は姿を隠して、現地人に見つからないように行動するべきですし。そもそも図書館で調べ物をしなくても、ネットにアクセスすれば、地方図書館くらいの情報は手に入るので、この段階で地上に降りる必要は無いはず。
それでも、エリスがやってきた理由は、ずばり「料理を食べるため」だと考えます。やけに料理にこだわって、味わいを料理評論家のように克明に表現していましたが、それこそが目的だからではないか。料理の味ばっかりは、ネットで調べても駄目で、直接味わう必要がありますからね。
その星の”料理文化”を知るには、レストランに通うのではなく、家庭料理を味わう必要があるでしょう。一般家庭にもぐりこんで、そこの料理を食べ、味覚記憶データを母船に贈るのが、エリスのメイン・ミッションだったに違いありません!
図書館で調べ物していたのは、多少は意味はあっただろうけど、ほとんどは”仕事してる”と見せるためのカモフラージュでは。食っちゃ寝では嫌われそうですし…
エリスが送った味覚記憶データは大好評で、ついに母船がやってきました。彼女らの接触の目的は、交易とか同盟とかではなく、単に「あそびにきた」ようです。あそびにいくには、まずその土地のグルメ情報は必須でしょう。
エリスによると、彼らの文明は進歩しきって停滞しているそうで、つまりは「退屈」なのでしょう。寿命もすごく長いでしょうし。退屈をまぎらわすために宇宙探検をする、というテーマはSFではよくありますね。ノウンスペースシリーズとか、ジェイムスン教授シリーズとか。
ナノマシンを土に埋めて、ロボットを作るシーンがありましたが、この手の、”あらゆるものを原料にしてあらゆるものを作ることができる”という機械を『コルヌコピア・マシン』と言います。これを完成させた文明は、お金とか経済とか無意味になってしまうんですよね。何でも好きな物が、無料で手に入るわけなので。エリスの文明は、その域に達しているのでしょう。働く必要も無いので、「あそびにいく」くらいしか、やることはなさそうです。
この物語は「ファーストコンタクト・ラブコメディー」だそうですが、”ファーストコンタクト”の意味は2通りあると前回書きました。狭い意味での”本当に初めての宇宙人との接触”の意味と、広い意味での”新しい宇宙種族との接触”の意味で、この物語はどちらなのかな、と疑問を呈したのですが、どうやら両方だったようですね。
”ビューティフル・コンタクト”の連中は、前者の意味、つまりこれが初めての宇宙人との接触だと考えていました。ハードSFマニアの彼らは、ファーストコンタクトの相手がネコミミ美少女というのは許せなかったらしい。
”CIA、およびDIA”にとっては、後者の意味だったようです。彼らは、エリスが”犬の人”と呼ぶところの宇宙人と既に接触しているのですね。DIAの管轄だ、というセリフがありましたが、CIAもDIAも諜報機関ですが、CIAは政治関係、DIAは軍事関係が管轄です。エリスのような”宇宙人”については、既に軍事問題ということなのでしょう。
おそらく米国政府は、”犬の人”と独自に接触していて、自分たちだけが交易の利益を得ようとしているのでしょうね。宇宙人技術は軍事バランスを劇的に変える可能性があるので、国益を考えれば当然、そうするでしょう。
アオイの組織は、日本政府の特務機関なのかな? 彼女のスーツは明らかにオーバーテクノロジーなので、宇宙人技術が入っていると思われ、日本政府も、”犬の人”か、あるいは別の宇宙人との繋がりがあるのでしょう。
この物語は、基本的にはラブコメなんでしょうけど、エリスたち”あけっぴろげな宇宙人”対、”犬の人”のような”陰謀を巡らす宇宙人”の対立の図式があるのでしょうね。そこに地球の国家権力も絡んでくると。
民間人のおっちゃんや女子高生が基地に突入して銃をぶっぱなすなど、荒唐無稽なところは気になりますが、SFフレーバーが随所にあり、今回も楽しめました。 SFファンとしては”ビューティフル・コンタクト”について書きたかったのですが、長くなったのでまた機会があれば。ひとつだけ付け加えると、「トレッキー」とはスタートレックの熱狂的なファンのことで、アメリカではかなりの影響力があるんですよね。スペースシャトルの一号機の名前は、”コンスティテューション”に決まっていたのに、大統領に直訴して”エンタープライズ”に変えさせたり。
そんなわけで、この作者がSFファンであることは間違いないようなので、今後も楽しめそうです。
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「あそびにいくヨ!」は、久しぶりにSFテイストに溢れた作品。
トレッキーネタには、ニヤニヤさせられました。
ネタの源流を探していくと、いろいろ楽しめそうですよね。
そこで質問なんですが、動物型宇宙人って、過去SFにありましたっけ?SFは弱くて、せいぜい古典作品しか知らないのです。
「シャンブロウ」という名がとっさに浮かんだのですが、アレは別に動物型とかではありませんでした。
ホラーファンタジーの世界なら、「キャットピープル」があるのですが、SFでは、寡聞にして知らないのです。
質問というか、ネタ提供レベルですので、テキトーに遊んでいただければ嬉しいです。
シャンブロウ懐かしいですね。快楽で相手を虜にして、精力を吸う、という宇宙人だったと思いますが、エリスは何かと騎央のことを誘っているので、そういう使命もあるのかと思ったり。
ネコ耳宇宙人といえば、コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズに登場する”ク・メル”を思いつきますね。宇宙人というか、ネコを元に人工的に作られた”亜人”ですが。しなやかな身のこなしの美女という設定でした。
スミス自身はネコ耳とは描写していないのですが、イラストからネコ耳のイメージが広まったようです。イラストレーターの手柄でしょうか。ただ、1970年代なので元祖ではないかもしれません。
キャーティアも、人工的に作られた種族かもとふと思いました。宇宙航行に適したように最適化された。自然に進化するには不自然ですものね…
”言葉が同じで、姿も似ていて、生殖もできる”というのは伏線だと思えるので、楽しみなところです。
ここでの、特にSFの話を読むたびに自分もアニメ見るばっかりじゃなくて知識の分野を広げてゆかねばと思っているのですが、なかなか踏み出せません。小学生の時くらい余裕があればなあ(遠い目)。
なかなか面白くなってきましたが、個人的に一番気になるキャラクターは主人公のおじさんです。悪い人には見えませんが、いかにも裏がありそう。
ところで、猫耳キャラの普通の耳はどうなってるんでしょうか。大概の場合髪に隠れて見えないようになっていますが、人間の耳はあるのか?あるなら、耳として機能しているのか?本筋とは関係ないですけどね。
あのおじさんは、何なんでしょうね。裏がありそうな気もするが、なんにもなさそうな気もします。登場人物全員が普通じゃない、という作品ですが。
ネコミミには、普通の耳がある場合と無い場合があり、二大派閥を形成しているようです。エリスは普通の耳もありましたね。
”普通の耳”が無い場合は動物に近く、ある場合は人間に近いと言えるでしょう。エリスはほとんど人間で、ネコミミや尻尾は後付けに見えますね。どういう進化をしたのでしょうか。あるいは人為的なのか。
人類とほとんど同じ形に進化して、耳だけそうなるのはヘンなので、やはりの耳は遺伝子改造か何かで作られたのかなと思えます。