預言者とは、なんだったのか。閃光のナイトレイド 第13話(最終回) 『せめて、希望のかけらを』 の感想です。
どんでん返しの連続で、スリリングではあったのですが、”肩すかし”な方向のどんでん返しも多かったですね。高千穂とガチバトルか、と思ったら、あっさり射殺されたり。
高千穂については、前回の感想で書きたいことは全部書いてしまって、今回は特に新しいことは無いので、省略します。
櫻井は二重スパイだったと。スパイものでは定番の展開です。高千穂には見抜けなかったんですね。しかし櫻井も、手下の松田勇作みたいな男に、あっさり裏切られていました。あの男が、食物連鎖の頂点にいると言えるでしょう。でも結局、何者だったのか?
”預言者”がバイオリンを弾いているシーンに、ちょっと笑ってしまいました。このチグハグさは、預言者という存在を象徴しています。僕は、この作品の欠点は”預言者”にあると思うのですよ。
この作品は、前半は軽妙なスパイものでしたが、後半から政治色が濃くなり、”歴史のIFを描く”という意図が見えてきました。つまりリアル指向ですね。葵や葛といった能力者の存在はリアルとは言えませんが、それはまだ許容できます。そういう存在が、密かに存在しないとは限らないし、個人の能力の延長に過ぎないので。
でも、”預言者”にはかなりの違和感があります。『事変』の回で、司令部の一同は、日本の歴史の岐路に現れるという”預言者”の存在を当然のように知っていました。でも、そんな存在は日本の伝説にも無いので、どこの平行世界の話かと思ってしまいます。”預言者”はキリスト教などの概念ですね。
また、”歴史のIF”モノであれば、歴史上の人物の行動原理はそのままで、ちょっとした干渉によって歴史が違う方向に動いていく、というのが見せどころになるのですが、この物語の場合は、みんなが預言者に踊らされているだけで、そういう”歴史のIF”のダイナミズムを感じられません。”預言者”を出すにしても、もっと小さな関与であるべきだったと思えます。
結末も、もうひとつすっきりしませんでした。2年後という中途半端な時間経過は、何の意味があったのだろう。僕ならば、20年後くらいにして、満州事変をキッカケにした戦争の歴史を振り返り、でも日本は蘇りつつある、という希望のある結末にしたいところです。それによって、葵たちの活躍が報われるだろうから。
でもそういう結末にしなかったのは、反戦メッセージを持たせたかったからでしょう。戦争に突入した過去から教訓をくみ取るべきだ、ということなのでしょうね。
文句を書いてしまいましたが、僕は基本的にはこの作品が好きなのです。ブルーレイを買ったくらいで。ブルーレイの1巻の記事は昨日書きましたので、ぜひ読んでください。褒めてます。ブルーレイ収録の0話を含めて、前半の”スパイアクション風味”の回はとても良かったと思えます。スタイリッシュで、スリリングで。キャラもとても良い。このキャラクタたちの活躍を、もっと見たいという気持ちはありますね。
1930年代を舞台にしたのは2つの狙いがあったと思えます。一つは、魔都と呼ばれたこの時代の上海を描くこと。もうひとつは、日本が第二次大戦に突き進む直前の、歴史の転換点を描くこと。狙いはすごく良いと思うのですが、1クールで両方を追うのは、無理があった気がしなくもありません。
ともあれ、楽しめた作品でした。後日談も作れそうなので、アニメは難しいかもしれませんが、小説などメディアミックスで何かあればいいなぁと思っています。
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ウィキ辺りを参考にする限り元来は「預言者(預は『予の旧字体の俗字』)」=「予言者」らしいのですね。
日本語では「預かる」という訓があるので本来は無かった区別が生じてしまったのだとか。
もっとも「言葉を預かる者」と読んだところで「神の言葉(神託)を預かって未来に起きる事象を語る者」という意味合いでは充分に通用しうるかなと思います。
とはいえ、こういう細々した解釈を埋めたところで物語として誉められ無かった事に変わりはありませんけれど(笑)
歴史に関しては間違いなく物議を醸してしまう時代ですから、素直に伝奇風味の超能力スパイ物をやってればもっと盛り上がった気がしないではありません。
でもこれが”歴史のIFもの”であれば、ある時点までは私たちの知っている歴史と同じで、それが何かのキッカケで分岐する、という展開が望ましかったと思えます。僕の勝手なこだわりかもしれませんが。
この時代を舞台にしたことで、満州事変などの歴史に触れたくなる気持ちはわかりますが、それはスパイス程度にして、”スパイ活劇”を基調にしたほうが良かったんじゃないかと、僕も思います。だとしたら傑作になりえたでしょう。