メルクマール

ロックという音楽は、そもそもは若者が体制へのやるかたない怒りをぶつけたもので、”ロック魂”とはそういう反抗心のことを言います。思春期にありがちなものと言えるでしょう。

『デスデビル』の音楽は、まさにロックそのものですね。思春期の不安感や、大人社会への理不尽な思いを怒りのエネルギーにしてぶつけている。それがさわちゃんの”魂”です。唯たちの『デスデビル』を見て、その頃の気持ちが蘇ったようで。「こんなものは私たちの魂じゃない」と我慢できなくなってしまいました。

でも僕は、さわ子たちの魂は継承されていると思うのです。唯たちも、将来への不安を抱えつつ、「今の友達といられる時間を楽しもう」と、バンド活動に打ち込んで（いちおう毎日集まって）いるわけで、あまり大人たちから褒められる、お行儀の良いこととは言えません。これはこれでロックでしょう。

さわ子も、進路調査票に「ミュージシャン」と書いたのですね。唯たちも書いたわけで、二人の気持ちは同じであるはずです。今の時間を失いたくないと。でも、大人にならなければならないことも分かっている。

唯はデスデビルの曲を練習しながら、「大人ってすごいね」と言いました。デスデビルの曲を聴いて、その中にある”ロック魂”を感じ取ったのでしょう。そこにある不安や理不尽な思いは、自分と同じであるはず。でも、さわ子はそれを乗り越えて、きちんと大人になっています。そのことに感慨を受けたのでは。

「大人になったら、大人になるのかな」とは深いセリフで、こういう閃きは唯らしい。子供の頃は、「大人になる」というのは遠い未来のことに思えるけれど、時間がたつと”大人”の年齢に自動的になるんですよね。でも、だからといって大人になれるとは限らなくて、自分で世の中との折り合いをつけることが必要です。さわ子は折り合いを付けつつ、彼女なりに輝いているわけで、唯たちにとって良いお手本でしょう。こうして、魂が音楽を通して継承されていくことを描いた、今回のお話でした。

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