メルクマール

棗がずいぶん喋っていましたね。彼は、雪菜と二人のときは「お嬢様」と呼ぶけれど、他のメンバーには「雪菜」と呼び捨てで、これも一種のツンデレだろうか。

あの二人を見ていると、サンダーバードのレディ・ぺネロープと執事のパーカーを連想します。いいコンビなんですよね。ぺネロープは貴族のお嬢さんで、あくまで優雅に任務を遂行するのが魅力。今回の雪菜も、他のメンバーが最前線で働いているのに、待合室で優雅に本を読んでいました。いいんじゃないでしょうか。　2004年の映画版で、ぺネロープ＆パーカーはけっこう活躍するので、ファンとしては楽しめます。逆に、本来の主役たちはさっぱり活躍しないのですが。

前半でメンバー同士の交流を描いただけに、ラストの葛の離反が切ないものになりました。彼としても、仲間を裏切ることは痛恨だっただろうし、残された葵たちの悲しみも伝わってきます。

葛は、石原莞爾の「世界最終戦論」にかなり影響されているようです。新型爆弾と航空機の発達により、戦争は様変わりして、最終戦争が起るだろう、という予言。

でも、高千穂勲はどうでしょうか。彼は未来のことを知っているっぽいので、石原の予言が”必ずしも当たっていない”ことも知っているのでは。　全世界を破壊するほどの兵器を持つことで、むしろ大国同士の戦争が起らなくなるという”核抑止”については予言していません。現実は、最終戦争とは逆になったわけです。　高千穂勲は、石原の先を行く「核抑止」を目指しているのではないでしょうか。

高千穂勲が葛に見せたのは、ウランの濃縮施設ですね。原子爆弾を作るには、高濃度のウラン235が必要で、そのためにまず、生成したウランを化学反応で気体（六フッ化ウラン）にします。そこにはウラン238とウラン235が混ざっているので、両者の僅かな比重の差を利用して、ウラン235の濃度を高めていきます。非常に時間がかかる作業なので、あのように多くのプラントを作って並列で行うのです。

葛はあれで、わりと情に流される男ですね。前回も、なんだかんだで葵を見逃しています。彼は自分のそういうところを”軍人しくない”と考えていて、手帳を眺めて反省していました。でもその甲斐なく、またやってしまったわけです。あの行動は、深く考えてのことではなく、「あの人物を死なせていいのか」という情に流された結果でしょう。手帳を落としてガッカリしたのは、その象徴でした。

あと3話だと思うのですが、風呂敷を広げる一方で着地点が見えてきません。そろそろ、桜井機関メンバーの派手な活躍も見たいと思えます。

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