メルクマール

音無の”みんな成仏作戦”（※宗教的な意味ではなく便宜的に成仏と呼びます）の第一弾でした。天使のやりかたは、強制的に規律に従わせて、学園生活を送らせることで成仏を促すものでしたが、音無は、生前の無念を晴らして成仏させようという手法です。

天使のやり方でも、”成仏”は可能なのかもしれません。この世界は、青春時代を追体験して魂を癒すためのものでしょうから、なんとなく学園生活を送るうちに、”生前の未練”を忘れて、成仏できてしまうのかもしれない。

でもそれは、末期ガン患者が、終末医療施設で、モルヒネを打たれて最期を待つようなものではと思えます。人それぞれでしょうけれど、僕ならばそういう”成仏”は嫌ですね。

『最高の人生の見つけ方』という映画がありました。末期ガンで余命を宣告された主人公たちが、「死ぬまでにやりたいことリスト」を作って実行していく話で、これには共感できます。　音無がやろうとしていることも、それに近いでしょう。「やりたことリスト」を聞き出して、それを実行するという。

でも、「本当にやりたいこと」はリストには書いていないもので、リストをこなしていくうちに（つまり生きていくうちに）見つかるものなんですよね。がんばってリストをこなした音無でしたが、最後は日向に持っていかれました。

この物語のタイトルは”Angel Beats”なので、”天使”がテーマなのだと思えますが、音無のやっていることは天使そのものですね。音無さんマジ天使。　天使は人を導くけれど、幸せになるのは人自身です。だからこの結末でいいのでしょう。

前回の記事のコメント欄で、この作品はいわゆる”セカイ系”なのかどうかということが話題になっていました。主人公たちがセカイのシステムに立ち向かい、それに打ち勝つなり、暴くなりという展開がセカイ系です。僕は当初、この物語はその手の”セカイのシステムを暴いて脱出する”話かなと思っていました。

でも、このところの展開はそうではなさそうですね。セカイのシステムは、フシギもキセキも含めて”そういうもの”だとして、その中で個々人がいかに生きるかという物語に終始するのかも。麻枝作品にはそういう傾向がある、のだそうです。（コメントのみかげさん曰く”逆セカイ系”）

だがしかし、今回のCパートは思わせぶりでした。このまま「一人一人が願いを叶えて成仏する」という平和的な展開にはならないのかもしれません。だとしたら望むところですが。

ポチっとして頂けると励みになります！↓