メルクマール

誰も本当のことは分かっていなくて、観察した事実から外挿・内挿して推測しているだけなので、この世界に対する解釈が、ゆりとかなでとで異なっていても不思議はありません。両者の違いについて見てみましょう。

まず”消える理由”について。　ゆりは「従順に学園生活を送ると消える」と考えています。また、岩沢のように「思い残すことが無くなったら消える」ケースもあることを認めていますが、それらは”別の現象”だと考えているように見えます。

かなでは、単純に「思い残すことが無くなったら消える」だけだと考えています。従順に学園生活を送っていて消える人がいるのは、それがその人の望みだから。この世界は、まともに学園生活ができなかった人のための救済場所なので、人並みの学園生活を送っただけで、満足して消えてしまうこともある、ということでしょう。

でもそれは”人による”はずで、例えば日向の場合はエラーが心残りなので、授業を受けただけで満足して消えることは無いでしょう。ゆりも同様のはず。なので彼らが、真面目に授業を受けないように抵抗するのは、かなで説では「無駄なこと」となります。

次に、”この世界の目的”について。　ゆりは、理不尽な人生を送ってきたせいもあり、この世界は理不尽な、悪意に満ちたものだと考えています。真面目にしていれば消えてしまうし、逆らえば天使に襲われる。確かに、彼女の視点では理不尽でしょう。なので、この世界のシステムを壊すことが、この世界から脱出する唯一の手段だと考えています。そのために”神”を探して倒そうとしている。

かなでの見解では、この世界は救済のためにあり、システムに従って、「思い残すこと」を解決して消えることが幸せだ、となります。自分はそのための手伝いをすると。

以前の感想で”オッカムの剃刀”（シンプルに説明できる理論のほうが正しい）という言葉を出しましたが、ゆり説とかなで説を比べた場合、かなで説のほうがシンプルなので、”オッカムの剃刀”で言えば正そうには見えます。　特に、”消える理由”についてシンプルに説明できているのが大きいですね。かなでは従順に授業を受けているのに何故消えないのか、が謎だったのですが、かなで説なら説明できます。彼女は戦線の連中が”成仏”するまでは、心残りが消えないのでしょう。

しかし僕は、心情的にはゆりを支持したいのですよ。この物語の目的が、”この世界のシステムを暴いてぶち壊す”であって欲しいからです。なぜなら、そのほうがダイナミックだから。

かなでのやり方だと、個々人の心の問題をいかに解決するか、という展開になり、物語のスケールが小さくなってしまう気がして。でもまぁ、まだどうなるか分からないし、その通りの展開でも盛り上がるかもしれないので、あまり予断を持たずに楽しみたいと思います。

それにしても音無君、あっさりとかなで説を信じて、ゆり派から鞍替えしましたね。かなでが正しいという保証は無いのに。そこは惚れた弱みということでしょうか。ゲームで言えば、かなでルートに入ったということか。こうなると、音無とかなでのラブストーリーに期待したいところです。

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