メルクマール

昔は、「ちょっとした変人」がコミュニティにいて、それなりに愛されていた気がします。僕が小学生の頃、「おっちゃん」と呼ばれていた謎の人物がいました。昼間からふらふらしていて、子供たちみんなと仲が良く、お祭りでは率先して子供たちをまとめていて。

就職して、研修で地元の販売店に配属され、その「おっちゃん」の自宅に行ったことがあります。十数年ぶりに大人の目で見た「おっちゃん」は、貧しそうで、家族もおらず、夜間警備員などのバイトで糊口をしのいでいました。でも相変わらず声は大きく、元気そうでした。

僕が子供の頃は、今から思えばずっとのんびりした時代だったのでしょう。今はネットがあり、世界中から一番安いものを買うことができるので、「地元密着型」のようなのんびりした商売は成り立ちにくく、少しでも安く売るためにシステム化と効率が最重視され、人間もシステムの一部として働くことが求められます。

昔は買い物といえば、付き合いのある商店街の店で買うのが「常識」でした。その商店の人は、儲けたお金をやはり町の中で使うので、そうやってお金が回っていて、そこそこ働いていけば、そこそこ暮らせたのです。でも今は、ネットで一番安い店を探して買うのが「常識」ですよね。常識は時代とともに変わります。でもその常識は本当に正しいのか？　”値段を少しでも安くする”ために、結局は人間があくせく働かなければならない世の中になってしまったのでは。

「常識」に合わせられない人は「変人」と呼ばれ、いつの時代にも居たわけですが、昔はそういう人も、前述の「おっちゃん」のように許されていて、居場所があった気がします。でも今は、人々は”システムの効率”のためにあくせく生きているので、「常識」に対応できない人を受け入れる余裕が無く、居場所を奪っているのではないでしょうか。

この物語は、そんな時代へのメッセージが込められていると思っています。橋の下は、世間の「常識」からはちょっと外れた、でも愛すべき人たちの”居場所”ですね。その人達を通じて、一般社会の外側から、「常識とは何か」を問いかけています。

「常識」とは所詮システムであり、それよりも「人間性」のほうが大切なはず。P子が言いたかったのはそういうことでしょう。

今回のアバンは、ニノのモノローグでした。ニノも居場所から追われて、一か所に留まることも不安で、そんな気持ちを「空を飛ぶクジラ」に託しているのでしょう。クジラといっしょにロケットも飛んでいましたが、まさに明日の5月18日、日本のH2ロケットが金星探査機「あかつき」を打ち上げるので、ニノはぜひ種子島に行くべきですね。

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