メルクマール

人はおしなべて、外向けの人格を演じているもので、これをペルソナ（仮面）と呼びます。美咲は、「強くて有能な生徒会長」というペルソナを、努力して演じているのでしょう。それは結構、大変だと思うんですよね。周囲からは怖がられたり、ウザがられたりして、そういう評判が耳に入って挫けそうになることもあるはず。飾らずに生きている妹のことが、うらやましそうでした。

でも一方で、頑張っている彼女を評価してくれたり、憧れてくれる人もいて、美咲がペルソナを維持するモチベーションになっているはずです。だからこそ、犬山5兄弟に秘密を知られて幻滅されることで、自分のペルソナが崩壊するような危機感に襲われたのでは。

碓井はその悩みに気づいていて、「あいつらのためとか言うけれど、自分のためなんだろう」とズバリ言います。でもそれは責めているわけではなく、美咲が勝手に悩んでいるだけで、犬山兄弟の気持ちを考えていないことを指摘したかったはず。碓井としては、秘密を知られても幻滅されることはない、という確信があるんですね。彼自身、美咲のギャップにやられたクチだから。ゆえに知られてもいいじゃんと思っていたのですが。

でも彼は、土壇場で態度を変えて、犬山兄弟に秘密を明かさないことにしました。なぜ気が変わったのでしょうか。

おそらく、キスしたためなんでしょうね。あのキスは狙っていたわけではなく、そもそも美咲が好きなのかどうか、自分でも良く分かっていなかったのでは。でもあの屋上のシーンで、キスするなら今だ、と突発的にやってしまい、それによって「やっぱりオレはこの娘が好きだ」と確信したのでしょう。 だから独占欲が強まってしまった。

しかし、普段の行いが悪いせいか、せっかくのキスも告白も、美咲からはいつものセクハラの一環と思われたようです。このすれ違いの構図は、面白いと思いますね。

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