メルクマール

リクの外の世界（河川敷の外）での生活については、断片的にしか語られていませんが、デートもしたことがないということで、彼はおそらく外では、他人と深く関わらないように生きているのではないでしょうか。関わると、どうしても借りを作ることになり、喘息や動悸に悩まされるから。 彼は結局、やさしすぎるんですよ。やさしすぎるから他人に近付けないという、”ヤマアラシのジレンマ”的なものと言えます。

でも河川敷では、基本的に”みんな敵”なんですよね。そんな環境だからこそ、逆説的ですが、彼本来の”やさしさ”が出せるのでは。ステラへの接し方を見ると、それがわかります。

最初にステラを見たときは、「子供の相手をするのは厄介だ」と逃げようとしますが、これは人との関わりを避ける本能とからでしょう。その後、酷い目にあうのだけれど、なんだかんだでやさしくしています。それはステラが”敵”なので、借りを作る心配がなく、彼本来のやさしさが素直に出せるからなのかな、と。

ニノに対してもそうですね。彼女は敵ではないですが、彼女から何かしてくれるわけではないので、借りを作る心配がない。なので、彼はニノには全力でやさしくできます。笹舟を助けたのも、ニノに気に入られようという下心ではなく、純粋にやさしさからでしょう。

また、「私は、今も昔も金星人だ。それじゃだめか」というニノの言葉に対して、「今も昔もこれからも、地球人の俺とでよかったら、一緒に」　というセリフは、とてもカッコイイじゃないですか。「過去のことを話したくないなら、金星人でもかまわない」という心遣いと、「そんなニノさんでも僕がついていてあげる」という愛情が込められています。

ニノは、笹舟を自分に投影していて、河原に引っかかってしまった笹舟にがっかりしてしまったけれど、リクといれば、自分のいつか大海原に出られるかもしれない、と考えたのでしょう。初めて彼女の人間らしさが見られた気がします。これもリク君の力ですね。

このシーンのピアノのBGMが、とても良かった。全体に音楽は素晴らしく、しかもかなり主張してます。河川敷という固定した背景でのドラマなので、変化をつけるためには音楽の役割が大きいのでしょう。

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