メルクマール

いわゆる爆弾サスペンスですが、爆弾はあくまで囮でした。爆弾の場所を教え、そこにやってくるところを待ち伏せして、桜井機関の能力を探る、という作戦だったのでしょう。雪菜の誘拐だけが目的であれば、こんな大げさなことはしなくてよいはずなので。

雪菜の落ち着いた行動がカッコよかった。テレパシーで三好の能力が時間切れだと思わせ、万年筆を落として敵の注意をそらし、同時にそれは三好への合図になっていたと。　良くできたプロットなのですが、もうちょっと盛り上がってもよかったので、演出があっさりしすぎているかもしれません。

全体的に、いろんな出来事が目の前を過ぎていくけれど、いまいち心に引っかからないような。一つには、キャラの魅力がまだ出ていないからでしょう。ストーリーに必要なセリフを、ひたすらしゃべっているという感じで。日常シーンは点心娘とのからみくらいですからね。桜井機関のメンバー内での日常シーンが見たいところ。

スパイものといえば、ウイットを散りばめた洒落た感じにするか、リアルで重厚な描写にするかだと思いますが、この作品はどっちつかずに見えます。この作品ならではの味が出るとよいのですが。

上海を舞台にしているのは、面白いと思うんですよ。上海租界と言えば、インディージョーンズの映画でも舞台になりましたが、そこでは”魔窟”という感じで描かれていました。この作品の上海は、清潔でモダンな都市であり、これもまた上海租界の姿なのでしょう。でもこの繁栄は、列強の微妙なパワーバランスの元に築かれた、砂上の楼閣とも言えるものです。そういう時代の空気に浸るのが、この作品の楽しみ方でしょう。

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