メルクマール

毎回書いているので、いい加減くどいかもしれませんが、この作品は”非現実感”あるいは”失調感”を強調しています。やけに黒コマの入るカット割りなど、とても落ち着かない、座りの悪い映像は狙ってやっているのでしょう。

アキラがいつのまにかミナの手下としてガッツリ働いていて、しかも父親と一緒にいるようになった経緯も、あまり説明されていません。なので唐突感はありましたが、これも狙ったところでは。

基本的には従来からの”新房演出”の流れにあるのでしょうけれど、その演出テクニックを”非現実感”の表現のために使っているという点で、実験的な作品だと思えます。

ただ、前回は比較的ゆったりしたストーリーなので良かったのですが、今回はめまぐるしいサスペンスなので、その上でこの演出をされると、かなりガチャガチャした印象はあるかな。付いていくのが大変ですが、振り落とされないようについて来い、という挑戦でしょうか。

ミナが作りたいのは、ヴァンパイアのための『租界』。　『租借地』とも言っていて、混同して使われていますが別物であり、この場合『租界』だと思えます。租界は”自治権のある外国人居留地”的なもので、租借地は”期限付の植民地”的なもの、なので。

租界と租借地の違いについては、こちらのサイトに詳しいです。このサイト（世界飛び地領土研究会）は租借地に限らず、飛び地全般についてのウンチクが書かれていて、とても面白いので以前から好きなのでした。歴史・地理ファンは必見。

ミナの、女王然とした堂々としたところと、子供のようにあどけないところのギャップが、今回も描かれていました。かなりの年長者なので、落ち着いているのが当然なのですが、見た目が少女なので、それに合わせて子供っぽさも出てしまうのでしょうか。なにしろ吸血鬼なので、人間の常識では測れない『非現実的な存在』なのでしょう。

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