メルクマール

楽器で音が鳴るには、なにか"振動するもの”が必要です。ギターならば弦だし、サックスならばリードといわれる葦の板。　金管楽器は何かといえば、演奏者の唇なのです。肉体を音源にするという、ある種生々しい楽器。

なのでいい音を出すには、唇の形とか、締め具合とかの微妙な調整が必要ですが、当然、楽器が変われば唇の具合も変わります。楽器をうまく鳴るせるには、人間が楽器に合わせて、楽器が鳴りたいようにしてあげることが肝要なんですね。金管楽器は、演奏者も楽器の一部なのだから。

そのことにカナタが気づくキッカケが、ガラス工場のマイスターの言葉だったというのは面白いでしょう。吹きガラスとラッパには、確かに共通点があるかも。

さらにそこから、タケミカヅチのレンズの話につなげました。レンズを弾いたときに鳴る音のピッチ（音程）は、レンズの形と比重で決まるので、それらは音を聴くまでもなく計測できるはず。でも、微妙な材質の違いは計測できなくて、それは確かに、音を聴けばわかるかもしれません。

楽器の音は、基準になる音程の上に、倍音と呼ばれる音が積み重なっています。ドの音であれば、その上にミやソやオクターブ上のドの音が重なり、さらにそういう綺麗な比率ではない倍音（非整数次倍音）も微量に混じっています。この倍音の混じり方が、つまり"音色”なのですが、それは材質によって変わります。　カナタは耳が鋭いので、サンプルの中で最も”倍音構成が近い材料”を見つけ出し、それが当たりだったということでしょう。

1話からずっと、”音”にこだわっているこの作品ですが、この調子で最後まで行くとしたら凄いなと思えます。カナタも一皮剥けたようですが、彼女の次の目標は何でしょうか。

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