メルクマール

最初の十数分は、もうウンザリするわけです。くっだらないバラエティー番組を延々と見せられ、再現性の高さに感心するものの、「力の入れどころがおかしいだろ」と思ったり。

でも、ここでウンザリさせるのは、制作者の計算通りなのですよ。　金髪の少女が「腕をとられた鬼さん」の話を始めたあたりから、「おっ」と引き込まれ、そこからの怒涛の展開。　前半のウンザリと、ラストの盛り上がりの落差に眩暈がするほどです。

普通は1話といえば、ツカミのためにテンポ良く話を進めるものですが、そんなの知ったことかとばかりに、落差を演出するためだけに、前半を捨てるところが大胆だなと思うのでした。

スタジオが混乱して、カメラの絵が乱れたりするのも効果的で、本当にその事件を体験しているような臨場感があり。

新房さん監督、吉野さん構成ということで、当初から期待作だったのですが、裏切られませんでしたね。でも「いつもの名調子」というよりは、むしろ新境地を開いたのではないでしょうか。今後もとても楽しみです。

『ヴァンパイアバンド』とは、『ヴァンパイアの群れ(band)』 だと思っていたのですが、"bund"なんですね。英辞郎によれば、「堤防｛ていぼう｝、埠頭｛ふとう｝、築堤｛ちくてい｝、海岸通り」　とのことで、ラストの描写から見て、『ヴァンパイアの人工島』といったところでしょうか。

今回のエピソードは、”ウンザリTVショー”に尺を取られたので、ストーリーとしては進んでいません。でも、何千年も歴史の裏で暗躍していた吸血鬼が、ついにTVを通じて存在を明らかに、という歴史的大事件を、リアルタイムに目撃したようでワクワクさせられました。これも計算通りでしょう。

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