メルクマール

イカロスと智樹には、すれ違いがありました。智樹が「兵器だったりしたら嫌だな」という言葉を、イカロスは深刻にとらえていて、「兵器であることを辞められないなら、マスターのそばにはいられない」と考えます。　一方で智樹は、兵器であることには気づいていて、普通の女の子としての生き方を見つけて欲しい、という気持ちから出た言葉でした。

最終回で、そのすれ違いが解消して、イカロスが涙を流したのは感動的なシーンでしたね。ここは、非常にわかりやすいクライマックスでした。

ニンフのほうは、多少わかりにくいのですが、彼女は「マスターに従うべき」という気持ちと、「智樹たちとの生活を大事にしたい」という気持ちの板ばさみでした。彼女の結論は、「自分が我慢すれば（消えれば）、すべてが丸くおさまる」という自己犠牲です。　ニーチェが言うところの『奴隷道徳』ですね。

今回、智樹たちに「大切な友達」と呼ばれ、助けられたことで、自分も彼らの一部であることを知り、「自分の幸せを求めてもいいんだ」と気づいたのでしょう。鎖を断ち切られたのは、『奴隷道徳』から開放されたことの象徴でした。

変わりゆく空の下　　私も変わりたいの
いつかあなたのように　　そっと笑えたら

ED曲の歌詞ですが、これはまさに、イカロスとニンフの歌でしょう。彼女たちはまだ、キッカケをつかんだに過ぎないけれど、智樹たちと同じ空の下、良い方向に変わっていければいいな、という余韻のあるエンディングでした。

まだ問題は、いろいろ残っているんですよね。空のマスターが、ニンフやイカロスを諦めるとは思えないし、イカロスが智樹の下に来た理由も不明のままです。夢に出てきた少女も身元不明。　これらは、2期でやって欲しいところです。

全体として、頭のネジが飛んだようなコメディと、エロというよりはエッチな妄想炸裂シーンと、シリアスなテーマとがうまくミックスした、優れた作品でした。特に『空飛ぶパンツ』は、後世まで語り継がれるでしょうね。　原作とはかなり構成が違うそうなので、暴走しているようでいて、緻密に計算されていたということでしょう。

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