前向きなメッセージのある作品は、やはりいいですね。 Steins;Gate 第24話(最終回) 『終わりと始まりのプロローグ』 のレビューです。
ある作品について、作者の”人生観”が出ているとか、”歴史観”が現れているとか言いますが、この作品は、作者の”宇宙観”、あるいは”時空感”と言うべきものが、現れているように思えます。
そう思う要素は2つあって、1つは、「観測してしまった歴史は容易には変わらない」という考え方です。 岡部は、まゆりが死ぬという未来を一度見てしまったので、タイムマシンで過去に戻り、状況を変えようと何回も試しても、まゆりが死ぬという過去は変えられませんでした。 タイムマシンをそもそも作らなかった、という時点まで遡って歴史を改変することで、やっとその世界線から脱出できましたが、そこまでしない限り、観察した事実は変わらないのが、この時空の性質だという考え方です。 でも、たかが人間の”観察”が、過去や未来の時空にまで影響を与えるのでしょうか。
実は物理学では、”観察”に重い意味を持たせています。 量子力学では、量子の状態は、人間が観察するまでは決まらないという法則があります。 量子がどこにあって、どんな状態なのか、それは確率的にはわかるけれど、決定はしていなくて、人間がその状態を”観測”したときに、初めて決定するのです。 「そりゃ変だろう」とアインシュタインなどは最後まで反対しましたが、今ではこれが定説になっています。 そうすると不思議なことが起り、有名な例が「シュレーディンガーの猫」の喩え話ですね。
1/2の確率で崩壊する量子と、量子が崩壊したら毒ガスを発生する装置を作り、それを中が見えない箱の中に、猫と一緒に入れます。 箱の中は観察できませんから、量子は崩壊したか、崩壊しないか決定しない、二つが重なり合った状態です。 ということは、箱の中の猫も、生きているとも死んでいるとも言えない、謎の状態だということになります。 常識的には妙な話ですが、いわゆる”コペンハーゲン解釈”は、それで問題無いと主張します。 誰かが観察するまで、猫は生と死が重なり合った状態で、観察した瞬間に、どちらかに収束するのです。 ”観察”が全てを決めるわけです。
では、もしタイムマシンがあったら、どうなるでしょうか。 箱を開けて、猫が死んでいたとします。 それを見たあとで、タイムマシンで過去に戻ってやり直したら、 1/2の確率で、猫が生きている未来に行けるでしょうか。
シュタインズゲートの宇宙観では、猫が死んだ未来にしか行けません。 ”観察したこと”は絶対であって、それと辻褄が合うように物理現象が収束するという考え方だからです。 コペンハーゲン解釈よりもさらに強く、”観察”に意味を置いていると言えます。 今現在の物理現象だけでなく、過去未来の時空全体に、”観察”が影響するという考え方です。 ”強いコペンハーゲン解釈”と言っていいかもしれません。
この話は一旦置いておいて、2つ目の要素についてですが、それは『リーディングシュタイナー』ですね。 違う世界線の記憶を維持することを、岡部はそう呼んでいますが、岡部に限らず、多くの登場人物がその能力を少しは持っているようです。
これもかなり不思議な話です。 異なる世界線の間は、物理的には完全に切り離されていて、ブラックホールという、物理現象が破綻した空間(特異点)を通りぬけない限り、関わりあうことはありません。 なので、脳内の電気化学現象に過ぎない”意識”や“記憶”が、異なる世界線で共有されることは無いはずです。
きっと、この物語の作者の”宇宙観”では、”意識”は単なる電気化学現象ではないのでしょう。 『人間原理』という考え方があります。 この宇宙は、信じられないような偶然の積み重ねによって、人間にとって住みやすいものになっています。 ほんの少し物理定数が違うだけで、人間も生物も住めない宇宙になっていたはずなのに。 なぜそんな偶然が起ったかというと、そもそも人間が存在しないと、宇宙があることはだれも”観察”できないのだから、宇宙も存在できないのだと。 だから人間が観察できるように、宇宙は人間に適した形になったのだ、という考え方が、”強い人間原理”です。 禅問答みたいですが。
人間の観察、つまり意識が、宇宙をも決定するのであれば、意識は時空よりも上位の存在なのかもしれません。 であれば、意識が世界線を越えることはできるのでしょう。 妙な喩えですが、好きな相手と出会って結婚する確率って、本来はかなり低いと思いませんか? 一生添い遂げても良いと思えるタイプの女性が、たまたま自分の近くにいて、その相手も自分に対して同じように思っていて、さらにただの知り合いから、深い仲になるためのイベントを発生させ、それをクリアしなければならないのです。 なんだか、天文学的な確率にも思えてきます。 でも現実に、世の中の多くの人は、適した相手と結婚して、それなりに幸せにしています。
もし、”強い意識は世界線を越える”としたら、どうでしょうか。 無数の世界線があり、その中には、その天文学的な確率をクリアして、”運命の相手”とゴールインした世界線もあるでしょう。 すると、それはかなりの”強い意識”ですから、今自分がいる世界線にも影響して、自分と、どこかの世界線での”運命の相手”とが自然と接近して惹かれあうということが、起り得るのではないでしょうか。 この物語の結末は、まさにそれが起ったわけです。
つまり、”強いコペンハーゲン解釈”と、”超強い人間原理”が、この物語の作者の宇宙観であって、それはとても前向きなメッセージだと思うのです。 私たちには無限の未来があり、自らの意志の力によって、より良い未来を掴むことができるのだ、という。 人類が、原始時代から今まで、何度も危機に瀕しながら、なんとかなってきたのは、それが”時空の性質”だからなのかもしれません。 個人レベルでも、諦めずに未来を信じていれば、道は開けるものなのでしょう。 なぜなら、時空がそうなっているから。 いや、これほど楽観的な世界観は珍しいかもしれません。 なんだか元気になれます。
ラブストーリーとしても秀逸でしたね。 友人を死から救うために、極限状態で協力しあった二人が、やがて惹かれあうようになり、互いのためならば自己犠牲を厭わず、その想いが時空をも超えたという、ドラマチックでロマンチックな物語でした。 とても満足できましたね。 映画も楽しみです。
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こんなのはどうでしょうか。
この世界には設計図、プログラム、遺伝子みたいなものが存在してそれには全てが書かれている。
全ての世界線、時間が書かれている。
全ての時間、世界での自分が一つになっているそんなものが存在する。
ハルヒでいうなら多分情報統合思念体はそういう存在なのかなと思います。別の言い方をするなら火の鳥でしょうか、全てはそこから生まれそこへと帰る、それの一部であり、それ自身でもある。
その存在にとって今の自分は、過去の自分であり未来の自分であり、今でもある。
そして、人間はそれから記憶というハッシュをたよりに次の自分ダウンロードしているに過ぎない、自由に別の世界や別の時間の自分と同期できる長門とは違うあまりに不完全で出来損ないの失敗作な長門。
そしてそこにいる岡部には全ての出来事が存在し、順番どおりならんでいる。
世界線は平行に並んでなどいない、並行でありながら時系列があるそういうもの。その中からでは平行に見えるが上位存在になるとそれは全てがつながった直線になる。
それがまゆりのいっていた何千万年前ということなのかなと思います。
何千万年というのは世界が終り、また始まりまた秋葉原にいいる二人、そして世界はまた終り、始まり、秋葉原にいる二人、そして世界は終わり、始まり、…、ずっと思いは連続していくずっとそこ(情報統合思念体、火の鳥)に自分はいる、今の自分はオリジナルでもあり大勢いるうちの一人、という話なのかなと思います。
きゅうべぇの進化型みたいな存在が存在して世界に生きながら、同時に高みから世界を観察している。
というのはどうでしょうか。
>前向きなメッセージのある作品は、やはりいいですね
そういわれると前向きに捉えたくなくなる天邪鬼なのでこんな捉え方もあるのではないでしょうか。
確かに人間は頑張れば何とかなるのかもしれない。
自分を何度も殺して大切な人が壊れるところまで追い詰めることで大切な人とクリスとの縁を結ぶことができる。
タイムマシンの開発に成功しセルンの支配に加担し、そしてまゆりを、ブラウン、萌郁を…することで岡部の逃げ道を封じ逃げれないようにする。
岡部に世界線漂流に必要なコンパスを届けるためだけに娘すら利用する。
完全なタイムマシンを手に入れ、それを次の自分に渡すためだけに次の自分に一度何十億人を殺させる。そのための最悪の兵器をダルに作らせ、その娘を実行犯にする、そんな選択をできる。
どんなにチキンでもそんな人間に頑張れば、なれる。
でも世界はきっとそんな人間を許してはいないんでしょう。
だから何度も世界は終わる。
世界を理解する存在は不要。
だから消される、なかったことにされる。
つまりは頑張っても全てが無駄何も変わりはしない、自分が救われることはない。
そうも捉えられるのでは?
とはいえ誰も頑張らなければ今もないわけですが…
岡部は何度もバッドエンドに行きあたっていますが、そこで諦めなかったから、最終的にはハッピーエンドなので、時空は自ら助くるものを助すくということなのでしょう。
現実のCERNが超光速のニュートリノを観測したらしい・・・ですね。
後はカー・ブラックホールと時空間座標と・・・。
ジョン・タイターは本物の未来人だったのでしょうか・・・。
まさか、ね。
真実は時空の彼方に。
エル・プサイ・コングルゥ。
それが本当だと、いろいろな観測結果と矛盾するので、なんらかの計測誤差な気がしますが、それはそれで新現象があるのでしょう。
でもタイミングが良いので、CERNがタイムマシンを開発してしまうのか、とか妄想するのは楽しいですね。