メルクマール

ほむらが同じ時間を繰り返す限り、この物語は終わらないので、抜け出すキッカケが必要でした。　そのキッカケを与えたのは、皮肉にもキュウべぇだと思えます。

まどかがケタ外れのエネルギーを持っている理由は、ほむらがループしまくって、因果をねじ曲げたせいだ、という会話がそれです。　これはナルホドと思いました。　主人公が、謎の潜在能力を持っている設定はありがちで、あまり理由は無かったりしますが、この作品は鮮やかに理由付けしました。　「かなめ」という名前は、扇の要（かなめ）のように、多くの因果の結節点になっているという意味なのだなぁ。　

それはともかく、このことはほむらに少なからぬショックを与えたはずです。　まどかのために、影で苦労しているつもりが、じつはまどかに迷惑をかけていたわけで。　　ここから、ドミノ倒しのように全ての現象が起りました。

まず、これが伏線になって、ほむらがまどかに全てをぶっちゃけます。　自分が同じ時間を繰り返していることを、まどかに話したのは初めてのはずですが、自分の”罪”を自覚したからには、打ち明けずにはいられなかったのでしょう。

そして、まどかがそれを知ったことが、まどかの「願い」に繋がっていきます。　まどかの「願い」が、「魔女をすべて消して欲しい」であろうことは、多くの方の予想の範囲内だったと思いますが、時空を超えて、「過去と未来の全ての魔女を消して欲しい」という壮大な願いになるとは、予想外だったのでは。　でも、時空を超えて繰り返される悲劇を知ったまどかが、こう願うことは、今となっては当然だとも思えます。

魔女が消えても、人間に感情があるかぎり、負の感情のひずみが魔物を生みだすことは避けられないようです。　でもまどかが宇宙の法則を書き換えたおかげで、「穢れ」を集めた魔法少女が、魔女になることは無くなりました。ただ消えるだけです。

それによって、インキュベーターは、魔法少女を魔女に育て、それをさらに魔法少女に狩らせるという、効率のいい方法を取れなくなりました。　仕方ないので、魔法少女を運用して、地道に穢れを集めているようです。　これにより、キュウべぇは人類にとって善玉（益獣？）になり、魔法少女は本当の正義の味方になれました。　一つの法則を書き換えただけで、すべてが逆転したわけで、見事な結末です。　またこれは、今後劇場版などで番外編を作る伏線になっているのでしょう。　実にうまい。

視聴後に感じたのは、この作品は結局、まどかとほむらの、時空を超えたラブストーリーだったんだなということですね。　ほむらは、同じ時間を繰り返すという迷路にはまりこみ、自分が自分であることを保っているのは、まどかへの思い入れだけでした。　まどかはそれを知らなかったのですが、最後に知るところになり、ほむらの想いは報われました。

一方でまどかは、人間であることをやめて、「現象」、あるいは「神」と言える存在になったために、誰からも忘れられてしまいます。　唯一、存在を感じることができるのは、時空を超える能力を持つほむらだけであり、共に全ての出来事と、相手の全てを知る唯一の存在として、深いところで結ばれました。　ある意味、究極のラブストーリーではないでしょうか。 これがロマンスでなくて何でしょうか。

放送時期が延びたことで、期待感が膨れ上がり、ハードルが高かったと思えますが、それを軽々と越える、素晴らしい幕切れでした。　シリーズの途中では、陰気な展開が続いて中だるみがありましたが、このラストのためであれば納得できます。　また、ヒロインのふにゃふにゃした性格や喋りも好きでは無かったのですが、それも全て、　「さあ、叶えてよ、インキュベーター！」と凛々しく言い放つシーンために必要だったと思えます。

映像や音楽も、言うまでも無くレベル高かったですね。　これは長く語り継がれる作品になるでしょう。　リアルタイムに見られたことが幸せでした。

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