メルクマール

コメント欄には書いたことがあるのですが、この作品は、ミスリードを誘いつつ、さらにそれもミスリード狙いかという雰囲気はありました。裏の裏ということです。キュウべえやマミは、一見善玉キャラですが、それはミスリードで実は悪玉ではないか、とは誰もが思ったでしょう。いろいろ分かりやすいですからね。でもあまりに分かりやすいために、それもミスリード狙いで、さらに裏があるのでは、という。

実際、マミはそうだったようで、基本的に悪意は無いキャラでした。時に腹黒く見えたのは、魔法少女であるという自らの運命を、呪っているからでしょう。彼女は望んだからではなく、死ぬよりはマシということで魔法少女になったのでした。でもその引き換えに、恋したり遊んだりもできず、危険と隣り合わせの生活を強いられている。その腹の底の黒い思いが、特にほむらと対峙する時には出てしまうようです。

異世界を探索している時、まどかが自分の”願い”についてマミに相談しますが、最初のうち、マミは明らかにイライラしていました。ここの声優さんの演技は上手いですね。それどころじゃ無い状況で、まどかの無邪気さに苛立つのは無理ありません。　でも、まどかが「マミさんと一緒に戦いたい」と言ったとき、彼女の態度は一変します。

魔法少女になることを急かすキュウべぇに対して、マミは何度も、慎重になるように諌めていました。それでも「絶対にやめておけ」とは言いません。それは内心、仲間が欲しかったからでしょう。一人ぼっちで戦うのは辛すぎるから。かといって、まどかたちのことを思えば、積極的に勧誘するべきではない。その板挟みで、煮え切らない態度だったと思われます。でも、まどかから「マミさんは一人ぼっちじゃない」と言われて、彼女は大いに感動しました。

それがまぁ、死亡フラグだったわけですが。あの死に方には背筋が凍ります。子供に見せたらトラウマになるでしょう。この作品はキャラを躊躇無く殺すだろうと覚悟はしてはいましたが、それでもショッキングでした。もう、「○だまりスケッチ」とか冗談でも言えません。

この作品は、どこへ向かうのでしょうか。”願い”は、少女にとって”将来の夢”とほぼ同義であって、夢について父親と語り合うシーンがありました。そういう、思春期の悩みや夢を綴るストーリーと、魔法少女が惨殺される話との親和性は、あまりよくありません。「願いなんか持っていても無駄だ。世界は優しくないのだから」というメッセージだとでも？　だとしたら救いがありません。1話の感想でも書いたのですが、やはりこの世界は、現実では無いのかも…

この作品のメッセージは何で、どこに救いがあるのか、それが気がかりです。でもそれとは別に、この作品の残酷さにゾクゾクしている自分も、確かにいるのでした。

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