メルクマール

単純に、「あやせがエロゲーの良さを理解する」という結末にしなかったのは、良かったのでは。「人それぞれであることを理解する」で良いのです。

一昔前に『ゲーム脳』という言葉が流行りましたが、これは脳医学者ではない大学職員が書いた本で、「ゲームをしている時の脳波を採ったら、認知症（痴呆）の人の脳波と同じだった。だからゲームをすると痴呆になる」という論です。でも脳波というのはそんな単純なものではないし、そもそも使った装置では脳波は採れてないとか、突っ込みどころは全方位にあり、まともな学者の多く（日本神経科学学会の会長など）が否定コメントを出しています。

 しかし、マスコミが大きく取り上げたこともあって、そのイメージはなかなか拭えていません。嫁に聞いたのですが、PTAの会合でゲーム脳について語り、「学校がゲームを規制するべきだ」と言い出す親がいたそうです。

エロゲーと性犯罪を結びつける論調も、それと同じですね。性表現の規制と性犯罪は、むしろ逆相関している（規制がきつい国のほうが性犯罪が多い）という統計もあって、少なくとも決め付けることはできないでしょう。

そういう論調がなくならないのは、「諸悪の根源はコレだから、みんなで叩きましょう」というのが、わかりやすくて大衆に受けるからですね。あやせもそれに毒されていますが、それは「そうだと信じたい」からで、そもそも潔癖性で、そういうものが嫌いなのでしょう。

桐乃は、あやせとの関係修復だけを考えれば、「もうあの趣味は卒業する」と言えばよかったのです。それが出来なかったのは、親友だから嘘をつきたくないという気持ちがあるのでしょう。理解した上で友達でいて欲しいと。そうでなければ、そもそも”親友”とは言えないわけで。

あやせの桐乃に対する気持ちは、単なる友達ではない気がしますね。お台場で会ったときの問い詰めっぷりからして、どこか異常な執着があります。桐乃を理想化して、それに半ば恋しているんじゃないかな。そして、その理想が失われたことに腹を立てている。

公園のシーンで、あやせはかなり酷いことを言っていますが、あれがすべて本心だとは思わないほうがいいでしょう。頭に血が上って、売り言葉に買い言葉の部分があるはずです。互いに友達でありたいのは確かなので、あの場はとにかくクールダウンさせることが必要でした。

そのための、京介の嘘ですね。兄弟で恋愛というのは明らかな背徳行為であり、「エロゲーで騒いでいるどころじゃない」と思わせれば勝ちです。その後、桐乃はあやせに「あれは嘘だ」と説明したようですが、すでにあやせは頭が冷えていたので、仲直りできたのでしょう。この事件で、お互いの理解が深まり、友情がより固くなったのでは。

それにしても、京介の嘘はいつも同じです。「妹とデートだ」とか、「俺はシスコン野郎だ」とか、「妹と愛し合っている」とか。本人は場を切り抜けるための嘘のつもりだろうけれど、他にも言いようはあるはずで、あくまでその方向にこだわるのは、それが潜在的な望みだからでしょうなぁ。

今回やけに、ハート型のクッションがフィーチャーされていました。常に桐乃がいじっていて、京介を攻撃する武器にもなっていましたね。OPの最後のカットにも登場するので、なにげに象徴的なアイテムなのでしょう。

今回のエピソードであやせの評判が落ちそうだけれど、僕は好きですね。『女子中学生なのにエロゲー大好き』という桐乃の対比として、『女子中学生らしく潔癖』なキャラは必要でしょう。「出会った時はほのかに好意を持っていたが、ある事件で嫌うようになる」というのは、少女漫画などのヒロインのパターンであり、ここからどう変わっていくのか楽しみです。

次回はジミ子（失礼）回ですか。桐乃は何かと「ジミ子」と話題に出して、意識していることを示しているので、二人のカラミがあるとすれば楽しみです。

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