メルクマール

かつて、長嶋茂雄が現役を引退するときに、「わが巨人軍は、永久に不滅です！」と言いました。冷静に考えると、自分の引退セレモニーの締めの言葉にはあまり相応しくない気もするのですが、その時の場の雰囲気にはバッチリ合っていたようで、多くの人々が感動して、名言として語り継がれることになりました。

唯による、「放課後ティータイムは、いつまでも、いつまでも、放課後です！」という決めセリフは、あまり場の雰囲気に合わなかったようで、「は？」というリアクションでした。でも、僕はグッときましたね。

これは、長島茂雄の言葉と同様で、唯なりの”引退宣言”です。放課後を軽音部で過ごしたことは、何よりの宝物であり、自分たちは引退するけれど、輝いていた放課後の時間はいつまでも心の中に残る、ということでしょう。そして放課後ティータイムも、聴いてくれた人々の心に残り続けると。

部室で、「これからの計画」について語り合うシーンは良かったですね。こんな時間が永遠に続くと思っていたけれど、でもそうじゃない。それがリアルに迫ってきて、自分たちがこれまで、どれだけ幸せだったかということを噛みしめているのでしょう。

梓は、そんな先輩たちを優しく見つめています。彼女はもっと前から、この日が来ることを覚悟していたので、先輩たちよりは冷静ですね。部室からライブ会場に向かうシーンで、一人称視点のカットが印象的でしたが、位置的に梓の視点でした。「この瞬間を目に焼き付けておこう」という気持ちが伝わってきます。

自分の話で恐縮ですが、僕は高校では吹奏楽部にいて、３年生の時は指揮者をしていました。最後のステージである文化祭では、「自分はあと何十年か生きるだろうけど、こんな大編成のバンドの前でタクトを振ることは、二度と無いんだろうな」としんみりしたものです。その時の気持ちが、妙に瑞々しく再生されて、切なさが２倍増しになりました。

ライブシーンは、ちょっとMCが長かった気もするけれど、あれは軽音部のメンバーにそれぞれファンが付いていて、ファンといっしょに盛り上げている様を描写するためでした。モブキャラを丁寧に描き分けてきたのはこのためだった、とも思えます。大変良かったかと。

けいおんの原作コミックスも、もうすぐ完結するそうですね。それと相まって、「残り少ない」という寂しさが募ります。残り話数をどうまとめてくれるのでしょうか。

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